どうして好きなんだろう

目の前の彼の口端はわずかに上がっていて、私の目を見ながら伝えられる。

「うん。おもしろいよな。」

彼も見終わっていたものに対し偉そうに勧めてしまった気まずさよりも、無愛想王子のわずかな表情の変化にびっくりして目を見張る。



「笑うんだ…。」

思わず出てきた本音に、今度は苦笑いするような表情を見せる。

「ははっ。何だよ、それ。俺のこと何だと思ってたわけ?」

「無愛想王子。」

必要ないところで正直者の私の口からはさっき命名したあだ名が飛び出す。

「悪かったな、無愛想で。」

途端にまたもとの無表情に戻るけれど、でもその目は幾分和らいでいて、私の顔にも自然と笑みが浮かぶ。

照れ隠しのように「ん。」と差し出されたDVDはさっきの私のおススメで。

「え、もう1回見るんですか?」

受け取りながらもレジに進む。
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