どうして好きなんだろう


「あ~!」

義人の部活が終わるのを待って一緒に帰ろうと校門を出る手前。

薄暗いグラウンドで軽やかな走りを見せる後姿に声を上げてしまう。

顔ははっきり見えないけど、今ならもうわかる。

あの後姿は絶対長谷川くん。

前に真っ暗なグラウンドで足音と後姿だけ見た、義人との機嫌が悪くなった張本人もきっと彼。

だから初めてバイト先で見たときにも後姿に見覚えあったんだ。

やたら日焼けして締まった体してると思ったら、陸上部だったんだ…。

あまりにもよく来るからてっきり帰宅部だと思ってたのに。


「なに?どしたの?」

目を丸くした義人の顔に、言うべきか否か迷っていると近づく砂を蹴る音。

「お疲れ。」

その張本人が義人に軽く手を上げながら通り過ぎようとする瞬間、私のほうをチラッと見て頭を下げるから思わず会釈だけ返す。
< 45 / 215 >

この作品をシェア

pagetop