どうして好きなんだろう
「百面相?」
笑いを堪えながら吐き出された声に顔を上げると、今にも吹き出しそうな長谷川くん。
「ナッ、何が?」
今まで頭に浮かんでいた人が突然目の前に現れたことで、今度は途端に頬がかあっと火照るのがわかる。
頭の中のことがバレたらどうしようと、心臓まで早鐘を打ち出す。
「サボってんなよ。」
慌てる私を、サボっているのがバレたからだと思っているような彼は、そう言いながら顎でレジカウンターを指し示す。
つられて振り向くと、DVDを抱えた幼稚園児っぽい子が、ちょうどカウンターまで歩いてきたところで。
「あ、お待たせしましたっ!」
彼のほうをもう一度見ながらカウンターに戻りかけるけど、早く仕事しろよと言わんばかりに他の陳列棚に向かっていた。