どうして好きなんだろう
「…さっきは、ありがと。」
「いーや。」
男の子の次にカウンターにやって来た彼にお礼を言う。
「テスト期間なのに2本も借りるの?」
彼の手から旧作の部類に入るDVDが2本渡される。
「そっちこそ。」
同じくテスト期間なのにバイトしている私も同じようなもんか。
いつもと変わらない口数少な目の彼との会話に、なぜだかホッとするけど。
いつもならもっと他愛も無い会話ができるのに、さっきの考え事の所為でうまく言葉が繋がらない。
ぎこちない空気の中、貸し出し処理を終えたDVDを彼に手渡す。