温かい春の訪れ【完】

彼には私なんて人かけらしか映ってないと思う。
まだ入学して一ヶ月立っていないというのに彼はすごくモテていつも名前を呼ばれている。
私なんて…たまたま席が横だったから…
私が緊張していたから…

だから話しかけてくれただけなのに。
笑いかけられるたびに私は期待している。

もしかしたら…と。

そんなはずないのに…


「篤志~」
ほら、また女の子が呼んでるよ。
彼はまた行ってしまう。
行かないでなんて言えないから。

そんな勇気ないから…

「ごめん、今、話してるから後でいい?」

え?行かないの?
呼ばれてるのに行かないの?

女の子は仕方なく自分の教室に戻っていった。

「行かなくてよかったの?」
私、ニヤニヤしていないだろうか。
こんなこと聞いてるけど、
行かなくて嬉しすぎるのに。

「うん、俺、麻野と話したかったから」
そんなこと言ったら私、もっと
欲張りになっちゃうよ。

期待しちゃうよ…
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