春よ、来い
彼女はショートヘアの似合う、小柄で目のパッチリした、とても可愛い人だ。

いつも慌ててるようで、それが小柄ゆえに妙にかわいらしい。

でもそれだけじゃない。

僕が彼女を気に入っているのは、このアクセクしたラッシュアワーの中で自分も慌ててるくせに、

彼女はいつも優しい微笑みを、

ひょっとしたら誰も気づかないかもしれないような小さな小さな微笑みを浮かべているように見えたからだ。

夜勤明けの僕には日の光だってまぶしいのに、

彼女はもっともっと、

まぶしいくらいに輝いて素敵に見えた。

そのころは無論ただ僕らはすれ違うだけだった。



 奇跡は2月14日、寒いバレンタインデーに起きた。
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