春よ、来い
無論何かゆっくりと話しをしたい。という気持ちがないわけではなかった。

でも。

朝は時間がないから話すことは出来ないこともわかっていたし、かといって特別に時間を作ることもためらわれた。

なぜならここで何か自分が声をかけることによって、この幸せな時間が壊れるのが怖かったからだ。

本当に僕にとって幸福な朝のかけがえないのない一瞬だった。


 そんな3月ももう終わりのある日、僕はバイトを終えていつものように帰ろうとした。ところが電車がいつものより3本遅れてしまった。

僕は慌てて降りてみたけど、階段にも改札にも彼女の姿はなかった。
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