太陽には届かない
3時間ほど飲んだ後、陽菜は席を立った。


『何よ、陽菜。お前帰んの?』


真っ赤な顔をした吉田が、うつろな目で問いかけてくる。


『あぁ…うん。泰之に電話しなくちゃ。』


『んだよ、連れねぇなぁ…』


『あはは。有田くんいるじゃん。てか、アンタもそろそろ帰んなよ。目がヤバイよ?明日の仕事に響くよ?』


『うるせぇよー、俺はいつでも大丈夫なの!!』


こうなったら吉田はどうしようもない。気の済むまで飲み続ける。
吉田を連れて帰ることを諦めた陽菜は、5千円札をカウンターの上に置くと、良平に声をかける。


『ごめんね、有田くん。吉田頼めるかな?住所言って、タクシーに押し込んでくれれば、無意識にでも家にたどり着けるヤツだから。コレ、吉田の住所。』


名刺の裏に、吉田の住所を書いて渡す。


『大丈夫っす。相沢さんも気をつけて帰って下さいね。』


良平は笑顔で名刺を受け取る。


『ありがと、助かる。私は大丈夫だから。また明日、会社でね。』


『お疲れ様です。』


『お疲れ様。』


店を出てすぐに、タクシーを拾うと、陽菜はそのまま自宅へと戻った。



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