太陽には届かない
アパートに着くと、陽菜は早速、泰之の持ってきてくれた箱を開けた。


『プリンだあ〜!』


陽菜は歓声を上げる。


『実家の近くにあるんだ。評判いいからさ、陽菜が気に入るかなって思って』


『ええっ?これ、わざわざ向こうから持ってきたの?!』


『そだよ。』


泰之は、ネクタイをはずしながらソファに座ると、プリンを覗きこんだ。


『思ったよりヒドイね…』


プリンはぐちゃぐちゃになっていたが、陽菜は泰之の気持ちが嬉しく、隣に座ると、泰之にキスをした。

泰之は陽菜の胸に顔をうずめると、外にいた時とは別人のように甘える。


しばらくそうした後、泰之はシャワーを浴びに、風呂場へと入って行った。

陽菜はその合間に、食事の支度をする。


(結婚したら、こんな感じなのかなぁ…)


泰之との結婚生活は、何故か容易に想像できる。



-良平とは??



陽菜は一瞬考え、すぐに我に返ると

『ないない…。』

小さく独り言を言い、ビーフシチューを温め始めた。


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