太陽には届かない
『じゃあ、また。』
泰之は改札前で振り返ると、右手を挙げる。
『うん。またね。』
陽菜もそれに答え、手を挙げる。
『あのっ…、泰之…』
歩き出そうとする泰之を引き留め、陽菜は自分でもよくわからないうちに
『今度は陽菜がそっちに行くね!近いうちに絶対行くから…』
そう口にしていた。
泰之は無言で微笑むと、陽菜の頭を撫でてから、改札の向こうへと消えて行った。
その背中が見えなくなるまで見送ると、陽菜は駅を後にして歩き出す。
その時だった。
カバンの中の携帯電話が鳴る。
−会えてよかった。陽菜が来るの、すごい楽しみにしてるから。一緒にどこか行こうな。
泰之からのメールだった。
口で言わない所が泰之らしい。
陽菜は、幸せいっぱいの笑顔でメールを返す。
−本当?!じゃあ、水族館に行きたい!陽菜も楽しみにしてるね♪
程なくして、再びメールが来る。
きっと、泰之からの返信だ…
陽菜はワクワクしながらメールを開く
しかし、それは泰之からのメールではなかった。