太陽には届かない
陽菜はシートを少し下げ、リクライニングを倒すと、ふぅっと一息ついた。

緊張する。良平の呼吸を近くに感じる。

暗闇の中で、駐車場を照らす街頭の明かりだけが、わずかに差し込んでくる。


『相沢さん…仕事どうですか?何か相沢さんて仕事できる感じしますよね。』


良平のお世辞とも取れるほめ言葉に、陽菜は微笑むと


『そんなことないよ。有田くんだって頑張ってるじゃない。吉田の下で働くの、大変だと思うよ。アイツわがままだし。』


良平は“ハハッ”と笑うと、タバコを取り出した。


『吸ってもいいすか?』


陽菜は頷く代わりに、ドリンクホルダーに置いてある灰皿の蓋を開けた。

良平は窓を開けてから、ライターを取り出し、タバコに火をつけると、大きく呼吸をしながら煙を吸い込み、そして大きく吐き出した。


『実はオレ、最近結構参ってるんすよね。家庭のことも…彼女のこともそうだし、仕事…はそうでもないすけど。』


『同じ職場だからって、仕事の話、遠慮しなくてもいいよ。』


陽菜は良平には目をやらず、灰皿を見つめていた。

若い男の子がよく吸う銘柄。メンソールではない所が少し大人っぽいなと思う。

良平もシートを少し倒し、リラックスした様子で話し始める。


『オレ、高卒なんすよね。それからしばらく、パチンコとかで生活してて。で、彼女に“そろそろ働いたら?”って言われて今年、新卒と一緒に働き始めたんす。』


意外だった。

まじめそうで、さわやかな好青年に見える良平がパチンコで生活していたなんて、思いもしなかった。


『そっか…。何か意外かも。有田くんて順風満帆な人生送ってきてると思ってた。』


陽菜は正直な感想を口にする。

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