太陽には届かない
『今日は急だったから、ホテルまだ取ってなくて…ごめんな。』


泰之は開口一番、そう謝ると車を発進させた。

高速に入る。

陽菜は窓を開けると、ビュンビュン通り抜ける風の音に耳を澄ました。

しばらく走ると、海が見えてきた。

港だ。

泰之の住む街は、海運会社や貿易会社が、数多く本社を置いている。

港には何隻もの船が停泊しており、明かりの消えているものもあれば、車を運び入れているものもある。

泰之は砂利道を進むと、堤防の手前で車を止めた。

陽菜は黙って車を降り、堤防に上る道をひたすら進む。

階段を登りきると、目の前に川か広がり、すぐ左手には海が見えた。

陽菜は堤防の上をどんどん川下に向かって歩き、海と川の境目を目指す。


『あんまりソッチに行くなよ。』


後ろから泰之の声がして、陽菜は足を止めた。


『どうして?』


不思議そうな顔をする陽菜には答えを返さず、無言でタバコの火をつける。


『ねぇ…、海と川の境ってドコなんだろうね?』


陽菜はかまわず続ける。
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