太陽には届かない
『鍵…?』

そこにあるのは、確かに鍵だった。形状から言っても、家の鍵であることは容易に想像できる。

それにしても、どこの鍵なのだろう。

もちろん、陽菜の家のものではないし、泰之は実家住まいなので、陽菜に実家の鍵を渡すわけがない。

だとすれば…思い当たるのはただ一つ。

二人の為に借りた家の鍵だ。

陽菜は慌てて、同封されていた紙を手に取り広げる。





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陽菜へ


同封した鍵は、地図に書いてある
アパートの鍵です。
築25年の古い平屋だけど、
きっと気に入るはずだから
今度来た時にはそこで過ごそう。
結婚の準備とか、重いものじゃなく
二人の秘密の隠れ家みたいに
楽しく過ごす場所だと思って。


泰之
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手紙にはそう記載されていた。

陽菜はその手紙を持ったまま、もう片方の手で荷物を持つと、ホテルの前からタクシーに慌てて乗り込んだ。

泰之との秘密の場所。平屋の一戸建て。

頭の中に、グルグルと円を描いたような混乱。

タクシーの運転手に、住所を告げ、地図を見せる。

運転手はうなずくと、“ここから5分もあれば着く場所だよ”と答える。

陽菜は“近くて申し訳ないけど、お願いします”と言い、地図を受け取ると、そのままカバンにしまい込んだ。
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