太陽には届かない
『ねぇ、有田くんてさぁ…どうなの?何か由梨とも飲みに行ったり、林さんともそんな感じでさぁ…。何かちょっと変じゃない?』


陽菜の問いに、吉田は苦笑いをする。


『うーん、どうなんだろうな。良平、あの通りのさわやか青年だろ。背だって高いしさ。俺から見ても、いい男だと思うもんな。そういうのって、女のほうが放っておかねぇんじゃねぇの?どうなのよ?』


逆に吉田に問いただされ、陽菜はうろたえる。


『どうなのって言われても…。』


『ま、アイツは前の彼女のこと、かなり引きづってるからなぁ…、何かあったにしても、本気って事はねぇんじゃねぇの?』


吉田は涼しい顔でそう言ってのけた。

それが、吉田なりに陽菜を心配して言っているという事は理解できたが、陽菜の気分はは沈んでいた。うつむいてため息をつく。

良平はきっと、誰にも本気じゃない…。


『おっ、陽菜!見ろよ!』


吉田が嬉しそうな声を上げたので、陽菜も思わず顔を上げる。


『わぁ…すごい!』


目の前には一面、海が広がっていた。ちょうど海に陽の光が反射して、とてもきれいだ。

こんなにキラキラと輝く海は初めて見た。


『すげぇだろー。ここに来ると、何か元気出るんだよなぁ…。』


陽菜はその言葉にハッと気づいた。

吉田はおそらく、陽菜の様子がおかしいことを察知していて、元気づけるためにここに連れて来てくれたんだと。


『吉田、あんがとね。』


陽菜がポツリとつぶやくと、吉田は不思議そうな顔をして“何がぁ?”ととぼけた。

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