太陽には届かない
外に出た途端、波の音が大きく耳に流れ込んでくる。

砂浜に向かってスタスタと歩いてゆく吉田の後をついていく。


『陽菜、俺さぁ…。』


急に振り向いた吉田に、陽菜は驚いて転びそうになる。


『ちょっと、急に振り向かないでよ!ビックリするじゃん。』


吉田はその言葉にも真剣な顔をして陽菜を見つめる。


『俺さぁ…オマエのこと好きだからさ、マジで。』


その口から発せられた、思わぬ言葉に一瞬、時が止まったような感覚に陥り、頭の中が真っ白になる。


『吉田…?アンタ急に何言ってんの?』


陽菜はすぐに我に返り、吉田を不思議そうな目で見た。



『オマエのこと、大事に思ってるからさぁ…本当に。…あっ、勘違いすんなよ、友達っつーか、戦友としてだからな!』


陽菜の不思議そうな顔で、少し恥ずかしい事を口走った自分に気づいたらしい。


『あはっ、やっぱね。』


『何かさ、俺、結構遊んでたじゃんか…昔。結構いい加減な事もやっててさ。だけど、やっぱ、みんな大事なんだよ。嫌いなやつもいたけど。』


『うん。』


吉田がまじめな事を饒舌に話すのは珍しい。
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