太陽には届かない

五里霧中

日曜の夜、吉田に送ってもらい帰って来た途端にベッドに倒れこむ。


『疲れたぁ…』


思わず独り言が出てしまうほど疲れていた陽菜は、寝転がったまま服を脱ぎ、放り投げると、下着姿のまま布団にもぐりこむ。

あれから陽菜と吉田は本当に、海沿いのビジネスホテルに泊まり、酒を飲み、語りながら徹夜で過ごしたのだった。

高校時代の思い出話から始まり、当時の友人達が今どうしているか、何を仕事にしているか、誰が結婚して、誰が別れたか、誰に子供がいるか…職場では話題に上がる事もない、他愛もない会話をし、夢中になっているうちに夜が明け始め、また、どちらが先に寝たか分からないうちに、眠りについていた。

起きるともう、チェックアウトの時間で、部屋の外のドアノブにかかっているクリーニング済みの洋服を着ると、あわてて外に出たのだった。

結局その日も海でボーっと過ごし、昼過ぎになって帰路についた。

帰りに高速のサービスエリアで『開運』と書かれたキューピーのお守りをおそろいで買い、携帯のストラップにつけた。

ストラップを眺めながら、めまぐるしかった2日間を思い出す。

そして陽菜は布団にもぐるとほぼ同時に意識を失い、そのまま眠りについてしまった。
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