太陽には届かない

『何か夫婦みたいじゃないですかぁ。“起きれた?”“ウン!”なんて、新婚さんみたい。』


由梨は冷やかすように笑う。


『同級生なんてそんなモンでしょ。私には彼氏がいるし、吉田は興味の対象じゃないの!いいから早くしーごーと!』


『はぁーい。…あっ、そうだ!』


『ん?』


書類に目を通しながら返事をすると、由梨は急に小声になり、陽菜の耳元でささやく。


『陽菜さん、有田さんと何かありました?』


『えっ?!』


思わず動揺し、机の上に積んであった書類に肘が当たったかと思うと、それをばらまく。


『あーあ、もう。陽菜さんて結構ヌケてますね。』


陽菜は“オマエに言われたくない!”と思いながらも、由梨の頭を見下ろし、すばやく思考をめぐらす。

良平が由梨に話した?由梨は良平に気がある?それともどこかで見られた?


『はいっ、これで全部です!てか、陽菜さんなんでそんなに動揺するんですかぁ?あっ、さては本当に何かあったとか?』


『また、由梨はそんなコト言って、先輩をからかわないの!』


『ふあーい。あの、じゃあちょっと相談に乗って欲しいので、今夜飲みに行けますか?』


由梨がサシ飲みで誘ってくるのは珍しい。陽菜は少し考えた後、特に今夜は(今夜も)予定がないので、“わかった”と頷き、書類を受け取った。

< 83 / 94 >

この作品をシェア

pagetop