太陽には届かない
由梨がセレクトしたのは、小さな個室がいくつもある居酒屋で、まだ時間が早いせいか客数も少ない。

陽菜はシャーリーテンプル、由梨は巨峰サワーで乾杯をすると、何の前触れもなく由梨が聞き出した。


『あの、陽菜さんの彼氏は束縛するほうですか?』


『えっ…?何で?…ていうより、束縛するタイプだったら遠距離は続かないと思うけど…。』


『そうですよね…実は…私の彼氏、すごく束縛するんです。携帯勝手に見ようとしたり…。』


『そうなの?』


由梨の顔がどんどん曇る。幸せな恋愛をしているとはとても思えない。


『それがもう、異常なほどで。この間も携帯取り合いになって、私、勢い余って折っちゃったんです。』


泣きそうな顔をしている。陽菜は、そんな恋愛やめればいいのにと無責任な事を思う。


『それ、ちょっと変だよ。由梨は信用されてないってことでしょ?何か他の男の人と二人で会ったとかさ、疑われるようなことしたの?』


陽菜の脳裏には、良平と二人で食事にいったらしいという吉田の情報が浮かんでいた。まるでカマをかけているようで、後ろめたくはあったが、知りたいという欲求にはやはり勝てない。


『…あの…有田くんに相談に乗ってもらってて…一回そのメールを見られちゃったことがあって、彼氏が有田くんとケンカしたコトがあったんですけど…!でも、有田くんとは本当に何もなくて。』


陽菜は軽い脳震とうを起こした気がした。
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