太陽には届かない
彼氏が怒るようなメールが、ただのメールであるわけがない。陽菜の疑惑は再び深まる。


『で、どうなったの?彼氏と有田くん。』


『有田くんが何もないからって言ってくれて・・・それで一応は収まったんですけど。それからずっとそんな感じで。』


由梨の彼氏もきっと、陽菜と同じだ。何もないと言われても信用できない。


『で、どうするの?由梨はどうしたいの?』


『私は…別れたいんです。別れるって言ったんですけど、絶対嫌だって言われて。』


『でも、もう無理なんでしょ?』


『はい…。』


『じゃあもう、仕方ないよね。別れるしかないもんね。彼氏に納得してもらうしか。』


由梨はコクンと頷くと、ため息を1つつき、グラスを空にした。店内は静かなままで、それが余計に重苦しい空気を感じさせる。由梨の顔には恋をしているときの輝きのようなものが一切ない。よく見ると、目の下はクマができていて、頬にはにきびが沢山できている。きっとあまり寝ていないのだろう。普段の由梨からは想像できない。


『あの…陽菜さんが有田くんと、ただならぬ関係だってこと、本当は知っていたんです。』


由梨の突然のカミングアウトに、陽菜は目を丸くする。


『由梨…まだそんな事言ってるの?』


陽菜は笑ってごまかそうとするが、由梨は眉1つ動かさない。


『二人が…その…とにかく見ちゃったんです、私。すみません…。』


『そか…、そうだったの。』


陽菜は抵抗するのを諦め、由梨に全てを打ち明ける。泰之とはまだ別れていない事。それでも良平に心惹かれていること。罪悪感を感じながらも、迷い、選べずにいること。吉田は多分気がついているであろうこと。そして、そんな吉田から、良平が由梨の相談に乗っているらしいと聞いた事。


由梨は陽菜の話を聞いては頷き、自分も良平とは天に誓って何もないと話し、そして陽菜の恋を応援すると笑った。






< 88 / 94 >

この作品をシェア

pagetop