太陽には届かない
『陽菜さん!』


振り向いて陽菜は、吉田が足早に去った理由が分かった。良平が後ろから歩いてくる。吉田なりに気をつかったつもりなのだろう。


『りょうちゃん・・・。』


良平は陽菜を見ると嬉しそうに微笑む。この笑顔の裏に別の顔があるなんて思えない。信じたくなかった。それでも由梨と何かしらあった事は確かだ。間違いない。信じたい気持ちと疑いの気持ちが、陽菜の中でやじろべぇのように微妙なバランスを保っている。


『陽菜さん今日、スカートかわいいね。』


良平は本当に嬉しそうに笑うと、陽菜の耳元でそっと囁く。


『今日、俺んち来ませんか?』


陽菜はその言葉に、一瞬耳を疑った。

良平の家に?良平は実家暮らしだ。夜ならきっと、両親もいるはずだし、兄弟もいるだろう。


『どうして?』


陽菜は思わず聞き返す。


『いや、一緒にビデオでも見ないかなって…』


少し照れたような、気まずそうな顔で、歯切れ悪く答える。


『わかった、いいよ。じゃあ仕事終わったら・・・そうだな、りょうちゃんの車に行くから。車で待ってて。』


『うん。』


良平は少年のような笑みを浮かべて頷いた。
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