東京+ラブクラフト
ラチのあかない聞き込みを止め
帰宅しようとしていた夏の夜
パンプスの足
突然の衝撃の後、体が浮いて
やけにゆっくり視界を流れて行く
駅の階段のグレー
頭から落ちると覚悟した瞬間
何かにぶつかり、誰かに腕をつかまれ
その速度が一気に落ちた
ザワザワと、何事か見に来る靴音
背中を一気に流れて行く、イヤな汗
「 危なかったあ!!大丈夫ですか?! 」
「 お嬢さん 平気か?! 」
「 ――― 誰だよ押した奴!! 」
半袖シャツで溢れかえった、駅のホーム
本気の心配と、やじ馬の混じった
たくさんの視線と言葉に、私は囲まれ
これは"警告"なのかと、一瞬だけ思った
だけどもう一方で
"彼はこんなやり方はしない"と
激痛が走る肩を抑えながら
確信に近い気持ちで思う
――― 誰かに思いきり 背中を 押された