東京+ラブクラフト
・空っぽの箱
「 こっち!
こっちからニオイがしたんだ! 」
相変わらず私は
腕を強く、つかまれたまま
ズカズカと案内もなく
ハァハァ粗い息 笑顔のソイツは
どんどん、奥に進んで行く
そしてテーブルの前には
皿に置かれたチキンとポテトが
これでもかってほど山盛りになってて
ソイツは片手でわしづかみにして
引きちぎる様に それをむさぼった
「 …足りないな
しかしこれどこのだ?!
味が全くしないじゃないか!!
クレームつけるかこんなの!!」
ブツブツ言うソイツを
――― ハルトさんはただ 見てる
吊り下げて持つタイプのライト
それを テーブルの上に置いて
ヤツの前に座った
「 まだ、足りないな… 」
大きなゲップを思いきりして
口元をグイグイとぬぐうと
暗い厨房をウロウロ
そして
ジャガ芋の入った麻袋を蹴散らし
乱暴に冷蔵庫を開いて
ガサガサ、中をあさり始める
「 ――― お!! ケーキか!! 」
箱の中に イチゴの乗った ――――