東京+ラブクラフト
タクシーの中には、メーターが三つ
私は聞かれるまま
運転手さんに道を教え
大きな道路を しばらく走って
見慣れた住宅街
だけどどこか、現実感がない感じの
明かりの見える、二階建て
電気の着いていない角部屋
自宅アパート前で
「 ここです 」とつぶやき
クルマを門前に、停めてもらった
カチ コチ と、音が聞こえる中
真横のドアが開く ――――
「 ――― あ…
あの 少し 待っててもらえますか…
お金 取って来るんで… 」
「 え? もうお代は貰ってあるよ〜
後、荷物渡されたから これね 」
――― あ…
「 私の、カバンだ… 」
「 さっきの、カレシさん? 」
「 …… え? 」
「 こんな早い時間に帰してくれるなんて
いいカレシじゃな〜い
大事にするんだよ〜 」
「 ――…… 」