東京+ラブクラフト
丸テーブルの上に置かれた
黒い、小さなケータイ ――――
… 近づくなって、どういうコト?
だって…ずっと、会いたくて
やっと… やっと会えたのに…
私は、ハルトさんを見つめて
ハルトさんも…
私を、黙って見つめてる
――… じゃあ
もう 一個の、選択肢 って なに…?
震える唇で そう聞こうとした時
バックの中の、ケータイも震えた
「 ご…っ ごめんなさい…! 」
ハルトさんは
ニコリと微笑みながら、席を立つ
バックから出したケータイの画面が
周囲を明るくしたと同時に
部屋の隅からも、卓上ライトの光
――― ハルトさんの キレイな横顔…
作業机の椅子に座って
遠く見つめる視線は
窓の外の闇、その遥か 向こう ―――
まだ鳴り止まないメロディ
急いで画面に視線を運ぶと
そこにあるのは、知らないケータイ番号
とにかく…通話ボタンを押した
「 ―――… は い 箱森、です 」
『 あっ!!もしも〜し!
あの〜… さっきは、どうもでした〜 』