触れないキス
○The past。゚
綺麗な二重の大きな瞳
きめ細かく、抜けるように白い肌
トレードマークの毛糸の帽子──
天使のように美しく、優しい微笑みを絶やさないキミは、毎日のように本を読んでいたね。
あたしはキミのとなりに座って、その本のストーリーを聞くのが好きだった。
『柚(ユズ)くん、今日は何を読んでるの?』
『“人魚姫”だよ、瑛菜(エナ)ちゃん』
『人魚姫がお姫様になって、王子様と結婚するんだっけ? 素敵だよね』
『そう、二人はいつまでも幸せに暮らすんだ。……だけどね?』
──本当はそんなハッピーエンドな話じゃないって、知ってる?
キミはそこまで言ったのに、続きを教えてはくれなかった。
何故か、あたしも知らない方がいいような気がして、
8年経った今も、その話の続きは謎のままだ──。
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