触れないキス
最初で最後の、愛とキス
「──瑛菜ちゃん」
墓前でうなだれる私の後ろから、あの愛しい声が聞こえた。
8年前より低く、けれど透明感のある声。
振り返ると同時に、天高く上がった花火が、美しく、儚げな顔を映し出した。
「……そ、ら……?」
驚きやまた逢えた感動、様々な感情が入り交じった私は、ただ呆然と彼のまばゆい姿を見上げていた。
そらは辛そうな顔をしながら近付いてしゃがみ、私の足にそっと触れる。
……けれど、触れた感覚はない。
ただ、ほんの少し温かく感じるだけ。
だから、そらが私に触れたことは一度もなかったし、
触れさせてもくれなかったんだよね──。
「走ってきたのか?」
答えようとしても声が出なくて、私は小さく頷いた。
「そんな無茶して……足痛いだろ?」
そらの口調は今までと違い、優しく私を包み込んでくれる。
それに、なんだか……こうしてるうちにどんどん、痛みが退いていく気がする。
不思議な感覚に呆気にとられていると、そらは目を伏せたまま言った。