触れないキス
「俺も……一緒にいたいよ」


きらりと光るものが一粒、柚くんの綺麗な瞳から溢れて。


「キミと一緒に生きたかった……」


ぽたり……クローバーの葉を濡らした。


初めて見た……柚くんの涙。

まじりっけがなく、宝石みたいに綺麗な、悲しみの結晶がこぼれ落ちる。


「……本当は、俺の病状が良かったのは、瑛菜ちゃんがいた3週間だけだったんだ」

「え……?」


柚くんが言うには、私と逢う前は治療が辛くて苦しくて、何度もめげそうになっていたそうだ。

四つ葉のクローバーを探すことなんて以ての外、病室から出られないくらいだったらしい。


「でも、キミと逢ってからは驚くほど具合が良くて、先生も親もびっくりするぐらいで。
退院も夢じゃないかも、なんて一瞬思ったけど……瑛菜ちゃんが退院したら、またどんどん悪化していったよ」


“瑛菜ちゃんは、俺の生きる希望だったのかも”

そんなことを言うから、私はますます涙が止まらなくなった。

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