触れないキス
サラサラの焦げ茶色の髪、

長い睫毛が伸びる、魅力的な切れ長で大きな瞳。

スッと通った鼻筋に、形の良い唇。


素敵な絵を描く繊細な手も、すらりと長い脚も。

柚くんを形作るすべてを、目に、心に焼き付けて、私はゆっくり瞳を閉じた。


そして、耳元で聞こえる愛しい声。


「もしも生まれ変わったら、また出逢いたいな。今度はちゃんと、元気な身体で」


閉じていても目頭は熱くなるばかり。

じわりじわりと込み上げてくるものを堪えながら、私も同じことを切に願った。


「好きだよ、瑛菜ちゃん」


耳から全身を駆け巡る

とびきり甘くて、とびきり切ない、愛の言葉。


「ずっと愛してた──」


唇に、暖かく優しい温もりを感じた。


触れることのない、

最初で最後の口づけだった──。


< 121 / 134 >

この作品をシェア

pagetop