触れないキス
ひんやりした夜風を感じて、ゆっくり目を開くと、
もうそこに、柚くんの姿はなかった。
空を鮮やかに彩る花火も、愛しい温もりも、もうどこにもない。
残ったものは、夜露のようにクローバーを湿らせた二人の涙と、
一生消えることのない──愛情だけだった。
「ゆ、ずくん……! 柚くん……っ!!」
何度も、何度も、何度も
名前を呼びながら、私はその場にうずくまって泣き続けた。
最愛の彼は
人魚姫のように儚く、美しく
空へと還っていった──。