触れないキス
80 years after...
創立100周年を迎えた高校の古びた美術室で、
授業の後、一人の男子生徒が壁に飾られた一枚の絵を眺めていた。
「先生、これどこに置いとけばいいですか?」
「そっちの準備室でいいよ。ありがとう」
彼が振り向くと、美術係らしい女生徒と教諭が話しているところだった。
教諭は忙しそうにしながらすぐに美術室を出ていき、準備室からは先程の女子が出てきた。
「──…」
視線がぶつかり、一瞬二人の間の時間が止まる。
しばらく見つめ合った後、先に言葉を発したのは女子生徒の方だった。
「その絵……好きなの?」
彼女の言葉に、男子生徒はふっと微笑んで答える。
「ん……、なんか見てると不思議と懐かしい気持ちになるんだよね」
美男子と呼ぶに相応しい綺麗な顔立ちをした彼の笑顔に、女生徒はほんの少し頬を赤らめる。
自然と心が惹かれ、彼女の足は絵と彼の近くへと動いていた。