触れないキス
運命の出逢いは突然に
「はい、次の人どうぞー」
「……あ!」
「あら、瑛菜ちゃん! 久しぶりねぇ」
全校生徒が一斉に行う健康診断。
大勢の生徒が列を作る多目的教室で、体重計の横に立花さんがにっこり笑って立っていた。
「よかった〜立花さんで! ちょっとサバ読んどいてね」
「そんなことしなくたって十分細いんだからいいでしょ!」
「細くないもん! ケチ〜」
口を尖らせながら体重計に乗る私に構わず、デジタルの数字が定まるのをしっかり見つめる立花さん。
「え〜と? よんじゅう……」
「わぁ〜! 口に出さなくていいから!!」
悪戯な笑みを浮かべる彼女にはやっぱり適わず、私はおとなしく体重が記入されるのを待った。
私が退院してからも、検査や風邪をひいたりした時には立花さんにお世話になっている。
アラフォーの仲間入りをした立花さんは、もう二人の子供をもつお母さん。
たまに会うと懐かしくてつい話し込んでしまう、私にとっては親戚のお姉ちゃんみたいな存在だ。