触れないキス

──ところが、そんな私に転機が訪れることになる。


今日から始まる選択授業。

私は凛と画材道具や教科書を持って美術室に向かっていた。


「よぉ、二人も美術か」

「わぁ! 桜太くん!?」

「げっ!」


並んで歩く私達の間に、桜太(オウタ)くんが後ろから割って入ってきた。

ワックスで無造作にセットされた髪は、この春休み中に少し色が明るくなっている。

そんな桜太くんの登場に、凛はあからさまに嫌そうな顔をする。


「何で絵心の欠けらもないあんたが美術なんかとってんの!?」

「美術だけ人数少なくて移動させられたんだよ」

「ぶはっ! だっさー」

「うるせーな。オールマイティの俺なら何だって出来るからいいんだよ」


こうやって言い合う凛と桜太くんは、幼稚園の頃からの幼なじみ。

そこへ中学で一緒になった私が入り込むカタチになり、見事に高校のクラスも3人一緒になった。


「何でも出来るとか言って、あんたが得意なのはサッカーとナンパだけでしょーが」

「元気しか取り柄のないお前に言われたかないね」

< 24 / 134 >

この作品をシェア

pagetop