触れないキス
「何かいい方法ないかな……」

「んっ? 何か言った?」


あ。つい独り言を……。

美術の大きな教科書を机に広げる私の隣に来た凜に、首を左右に振り笑ってごまかす。


「ううん、何でもない!」


凜は出席をとった後、隣の男子と席を交代して私の隣で作業をするんだ。

おじいちゃん先生はこういうことにも寛容で、私達生徒からの人気も高い。


凜だったら顔も広いし、彼のクラスの人に聞いたり出来るかもしれないな。

教科書の端っこに謎のキャラクターの絵を描く凜を眺めながらふと思った。


恥を忍んで頼んでみようか……。

そんなことを考えていると先生が何かを言ったらしく、凜が「えーっ?」と不満げな声を出して突然顔を上げた。


「めんどくさいよ~!」

「え、何!? 何だって?」

「文化祭のポスターを描けって! それが試験代わりらしいよ。どれを採用するかは投票で決まるんだって」

「そうなの!?」


確かにあのポスターは誰が描いてるんだろうと思ってはいたけど、まさか自分達が描くことになるとは。

文化祭は毎年7月に行われる。今はもう4月中旬だから……

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