触れないキス
「3ヶ月……あるからなんとかなるんじゃない?」

「瑛菜は放課後残れるからいいかもしれないけど、運動部のあたし達にとっちゃ死活問題よ! ねぇ桜太!?」

「あぁ、今だけは凜の意見に賛同するわ」


凜の前に座っていた桜太くんも、うんうんと頷く。

そうだった……私は帰宅部だから忘れてた。

サッカー部の桜太くんはもちろん、凜も弓道部に入っているから授業以外に時間はないだろう。


うーん、と皆で難しい顔をすると、桜太くんが「まっ、大丈夫だろ」と明るい声で言う。


「ピカソだってあれで評価されてんだぜ? あれだったら俺にも描ける」

「確かに! 芸術って上手い下手の問題じゃなくて個性があるかどうかだよね!」

「あぁ~……いや、そうかな!?」


けらけらと笑い合う二人の変な説得力に、私は一瞬納得しそうになってしまった。

やっぱりこういう所だけは気が合うんだから……。


私がどんな絵を描こうか考えている間も、「息抜き」と言いながら凜はナゾキャラを、桜太くんはパラパラ漫画を書き続けている。

さっきの憤りはどうした!? まったく、この二人は……。

私は呆れたため息を漏らしながら、真っ白なポスターボードを見つめていた。

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