触れないキス
ほんの少し戸惑ったような表情を垣間見せて、彼は形の良い唇を動かす。
「……そら」
初めて聞いた彼の声、彼の言葉は
私の期待を見事に打ち砕いた。
「……そ、ら? それが、あなたの名前?」
「そうだけど。何かおかしい?」
「あ、ううん……!」
“そら”というらしい彼の声色は少し冷たく感じて、私は慌てて首を横に振った。
彼の顔立ちは、柚くんにとてもよく似ている。
似ているけれど、柚くんが纏っていたあの温かい雰囲気がまったく感じられない。
それ以前に、名前が違うということは、やっぱり別人なのだ……。
がっかりしたような、ホッとしたような、複雑な気持ちでいっぱいになっていると。
そらくんは不意に私が落としたペンを指差す。
「早く拾えよ」
ほんの少し鬱陶しそうに、ぶっきらぼうに言うそらくんに、私は唖然とする。
こ、こういう時って、心優しい人なら一緒に拾ってくれるものじゃない?
別に拾ってほしいわけではないけど、そういう誠意を見せてくれてもいいんじゃ……。
「何?」
「い、いえ」
なんか恐いし!
「……そら」
初めて聞いた彼の声、彼の言葉は
私の期待を見事に打ち砕いた。
「……そ、ら? それが、あなたの名前?」
「そうだけど。何かおかしい?」
「あ、ううん……!」
“そら”というらしい彼の声色は少し冷たく感じて、私は慌てて首を横に振った。
彼の顔立ちは、柚くんにとてもよく似ている。
似ているけれど、柚くんが纏っていたあの温かい雰囲気がまったく感じられない。
それ以前に、名前が違うということは、やっぱり別人なのだ……。
がっかりしたような、ホッとしたような、複雑な気持ちでいっぱいになっていると。
そらくんは不意に私が落としたペンを指差す。
「早く拾えよ」
ほんの少し鬱陶しそうに、ぶっきらぼうに言うそらくんに、私は唖然とする。
こ、こういう時って、心優しい人なら一緒に拾ってくれるものじゃない?
別に拾ってほしいわけではないけど、そういう誠意を見せてくれてもいいんじゃ……。
「何?」
「い、いえ」
なんか恐いし!