触れないキス
急接近の放課後
柚くんによく似た彼は別人だった。
だからもう何も気にする必要はないのに……
美術の時間になると、私は相変わらずそらくんのことばかり見てしまっていた。
あの時以来、私達は話すこともなく、また見つめるだけの日々に逆戻り。
そしてそらくんを見ては柚くんを思い出す……その繰り返しだ。
なんだか、進んでるようで何も変わってないな、私……。
私を置き去りにしたまま季節は流れて。
桜の木はいつの間にか新緑の葉を纏い、初夏の爽やかな風に揺られている。
文化祭もあと2ヶ月、ポスターの提出期限も徐々に迫ってきていた。
「ダメだぁ……まったく終わりそうにない」
半分も仕上がっていないポスターを眺め、私は机に突っ伏した。
「うっそ。あたしもう終わるよ?」
「え゙ぇっ!? そんなはずあるワケ──!」
……あったわ、ここに。
私は凛の描いた絵を見て一気に脱力した。
ポスターボードにはたくさんの葉っぱが適当に描かれ、遠くから見ると『20』という数字を作っているのが分かる。