触れないキス
「いるの? 好きな人」
真剣な顔で聞いてくる凛と、その後ろで耳をそばだてて私を見やる桜太くん。
ドキリと軋む胸には知らんぷりをして、私は軽く笑い飛ばす。
「いないって~! 雰囲気も何も変わってないし、二人とも勘ぐり過ぎ!」
「ホントぉ?」
「ほんとほんと!」
完全否定したけれど、やっぱり心の奥はムズムズする。
きっと、これが本心ではないからだ。
はまらないピースを無理やり押し込めているような、もどかしさを感じる私の頭の中には、二人の男子の顔がチラつく。
「まっ、そういう人が出来たらちゃんと報告してよね?」
「うん……!」
ニコッと笑っていちごミルクを返してくれた凛に、私も笑顔を返す……けれど。
少し後ろめたい気持ちを感じてしまうのは、やっぱり“好きな人はいない”と言い切ることが出来ないから。
その相手が柚くんなのか、そらなのかは自分でも分からない。
はっきりしないから凛にも言えない。
ただ、誰にも言えない秘密がまた一つ増えてしまったということだけは確かだ。
その秘密とは
放課後、彼に会うために美術室に行っていること──。
真剣な顔で聞いてくる凛と、その後ろで耳をそばだてて私を見やる桜太くん。
ドキリと軋む胸には知らんぷりをして、私は軽く笑い飛ばす。
「いないって~! 雰囲気も何も変わってないし、二人とも勘ぐり過ぎ!」
「ホントぉ?」
「ほんとほんと!」
完全否定したけれど、やっぱり心の奥はムズムズする。
きっと、これが本心ではないからだ。
はまらないピースを無理やり押し込めているような、もどかしさを感じる私の頭の中には、二人の男子の顔がチラつく。
「まっ、そういう人が出来たらちゃんと報告してよね?」
「うん……!」
ニコッと笑っていちごミルクを返してくれた凛に、私も笑顔を返す……けれど。
少し後ろめたい気持ちを感じてしまうのは、やっぱり“好きな人はいない”と言い切ることが出来ないから。
その相手が柚くんなのか、そらなのかは自分でも分からない。
はっきりしないから凛にも言えない。
ただ、誰にも言えない秘密がまた一つ増えてしまったということだけは確かだ。
その秘密とは
放課後、彼に会うために美術室に行っていること──。