触れないキス
彼の手元を覗き込むと、今日は色とりどりの蝶が青空に舞っている。


「色がキレイ~! 素敵!」


感嘆の声を上げると、そらはうざったそうな、少し照れたような顔をする。


「まだポスター描き終わらないのか?」

「……まだ、だよ」


色を重ねながら呆れたように言うそら。

彼はわかっているのかな。

私がここへ来る理由にするために、わざとゆっくり仕上げてるってことを。


「まぁ、そんなこと俺には関係ないんだけど」


微妙な乙女心を抱きつつ席に座ると、そらはやっぱり冷たい一言を口にした。

はいはい、そーですよね。

あなたが興味あるのは絵のことだけですもんね。

心の中で悪態をつきつつ、頬を膨らませていると。


「このまま……描き終わらせなくてもいいんじゃない?」

「え……?」


目線を上げると、私を見つめる彼の真剣な瞳とぶつかる。

それはつまり……ずっと、こうしていてもいいってこと?

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