触れないキス
「そうだったんだ……ちょっとショック」
知らなかった、そんな悲しい結末だったなんて。
なんとなく物悲しい気分になって、私は真っ黒な濡れたアスファルトに目を落とした。
すると、そらの淡々とした声が夜の闇に響く。
「俺は何とも思わない。……似たようなものだから、俺自身」
──意味深過ぎる言葉に、私はそらを見上げたまま固まる。
「どういうこと……?」
問い掛けてみても、そらはまったく答える気はないようで、止めていた足を一歩踏み出した。
やっぱり肝心な所は教えてくれないんだ。
いったいどういう意味なんだろう。
似たようなものっていうのは、人魚姫とってことだよね。
そらも報われない恋をしたっていうこと?
そして今も、その人が好きなのかな……?
そんなことを考えたら、急に胸がぎゅうっと締め付けられて
苦しくて、痛い。
でも、そらの背中がとても寂しそうに見えるのは気のせい?
彼が何を抱えているのかはわからないけれど、私はもっと寄り添いたい。
もっと、あなたに近付きたいよ──。