触れないキス
「おいお前ら。どっちの意見にも共感するがな、今は人の話を聞け」
あぁ、そういえばホームルーム中だった。ていうか話聞こえてたんだ。
担任の呆れたような視線に気付き、私達はお互いに苦笑した。
「……凛、課題見せてあげてもいいけど、帰りにドーナツおごってね」
「……了解しました、瑛菜さん」
今度は小さな声で囁き、素直に敬礼する凛に笑いがこぼれた。
いつもこんな調子で、何でも言い合っている私達。
──だけど。
そんな凛にも、まだ話していないことが一つだけある。
私が美術を選んだ理由は他にもあるんだ。
再び窓の外を見やると、もうさっきの男子生徒の姿はなかった。
意味なく軽いため息をついて、また桜の木を眺めながら遠い記憶に想いを馳せる。
『絵を描く仕事をしたいな』
希望に目を輝かせてそう言っていた、幼い頃のキミ。
その夢は叶えられていますか?
今、どこで何をしていますか?
私はもう一度、キミに逢いたいです──。
あぁ、そういえばホームルーム中だった。ていうか話聞こえてたんだ。
担任の呆れたような視線に気付き、私達はお互いに苦笑した。
「……凛、課題見せてあげてもいいけど、帰りにドーナツおごってね」
「……了解しました、瑛菜さん」
今度は小さな声で囁き、素直に敬礼する凛に笑いがこぼれた。
いつもこんな調子で、何でも言い合っている私達。
──だけど。
そんな凛にも、まだ話していないことが一つだけある。
私が美術を選んだ理由は他にもあるんだ。
再び窓の外を見やると、もうさっきの男子生徒の姿はなかった。
意味なく軽いため息をついて、また桜の木を眺めながら遠い記憶に想いを馳せる。
『絵を描く仕事をしたいな』
希望に目を輝かせてそう言っていた、幼い頃のキミ。
その夢は叶えられていますか?
今、どこで何をしていますか?
私はもう一度、キミに逢いたいです──。