触れないキス
「ピエロのままにしといた方がよかったかもね?」

「そーよ! あんな女ったらしはピエロで笑い者にされればよかったのよ!」


プイッとそっぽを向く凛。

うーん、そういう意味で言ったわけじゃないんだけどな……。


「あっち行こ、瑛菜!」

「あ、うん……!」


凛に腕を引っ張られて、私達は教室を出た。

この二人、いつになったら幼なじみの線を越えられるんだろう……。


私までもどかしい気持ちにさせられながら、華やかな校内を歩く。

いつもと全く違う雰囲気の校内は、様々な衣装を身につけた人達で賑わっていた。


あちこちで目につくポスターは、他のクラスの女子が描いた個性的な絵が選ばれた。

なんと凛が描いた葉っぱの“20”の絵が、意外にもいいところまで健闘したんだとか。

私はそらの絵が選ばれるとばっかり思っていたけれど……


「……あれ? そういえばそらって……」


文化祭のポスター描いてたっけ?

色々な絵を描いてたけど、どれもそれらしき物じゃなかったし、趣味だって言ってたし……

いったい、いつ描き終わってたんだろう?

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