触れないキス
「何でわかるの!?」

「わからなければ占いの意味ないでしょう。それに、不幸が顔に出ています」

「うっ」


よ、容赦ない……。不幸が顔に出てるって、タロット関係ないし!

しれっと答えた彼女は、表情一つ変えずに淡々と話を続ける。


「それでもまだ諦めきれていないようですね。ちゃんと想いは伝えたんですか?」

「い、いえ……」

「お相手は気難しい方のようですから、無理ないかもしれませんね」


開いた口が塞がらない私。

まるで心をそっくりそのまま読まれているようで、驚きと共に少し怖くなった。

ほんと何なんだろう、この子……。

少し不気味な雰囲気にオドオドしていると、彼女は私の目を見据えてきた。


「あなたが心に想う人は、もう一人いらっしゃるのではありませんか?」

「──えっ!?」


それってもしかして、柚くんのこと?

私の反応を見て図星だと捉えたのか、彼女は無表情のまま淡々と言い放つ。


「贅沢ですね」

「……スミマセン」


なんだかすごく悪いことをしているような気分になってくる……。

歯に衣着せぬ物言いをする彼女に、私は引きつった笑みを浮かべるしかなかった。

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