触れないキス
素直になって…
あっという間に文化祭も最終日。
一般公開は昨日までで、今日は部活動の発表やバンドのライブが行われる。
昨日はあれから武田くんの家で打ち上げをして、今日は朝から教室の片付けをしていた。
「まだ胃がムカムカすんだけど……アイツら一生恨む……!」
案の定、桜太くんは二日酔いの様子。
しかもやっぱり昨日の一件は覚えていないらしい。
「なぁ……俺昨日アイツに何かした?」
「えっ? アイツって……凛?」
桜太くんが指差す方には、いつも通り皆と笑顔で後片付けをしている凛がいる。
「何で? 別に何もしてなかった……と思うよ」
むしろされたのは私の方なんですけど?
「珍しく朝から何も口きかねぇんだよ。いつもの憎まれ口叩かねーから、なんかこっちも調子狂うっつーか」
「そうなの……?」
確かに凛が桜太くんと喋らないというのは珍しい。
嫌味ばっかり言ってるけど、それでも二人にとっては大事なコミュニケーションなのだ。
ていうか、桜太くんも素直に“寂しい”って言えばいいのに。