触れないキス
「でもそう言われてみれば、変に明るいっていうか……空元気な気もするね」


そういえば昨日の打ち上げでも、たまにボーッとしてたり、かと思えば急に明るくなったりして、今思えばいつもと様子が違ってた。

何かあったっけ……?


昨日の打ち上げの前のことを頭の中でリプレイさせていると、ふとある考えが思い浮かんだ。

まさか──桜太くんが私に抱きついたところを見てた、とか?

あの時、もしかしたら凛はもう教室に戻ってきていたのかもしれない。


もしそれで変な勘違いをしてるんだとしたら……

こんなことしてる場合じゃない!


「私、ちょっと凛と話してくる!」

「あ、おい瑛菜!?」


私は持っていたゴミ箱を桜太くんに押し付けて、凛のところへ駆け寄った。


「凛! ちょっと来て」

「えっ? ちょっ、瑛菜! どうしたの!?」


私は凛の腕を引っ張って教室から外に連れ出す。

「何事っ!?」と戸惑う凛の叫びは無視して、強引に人気のないテニスコートの辺りまでやってきた。

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