触れないキス
「今日のファイヤーストームが成功したら……あたしの話、聞いてほしい」


……凛が何でそう言ったのか、少しわかる気がする。

きっと、“ファイヤーストームが成功したら告白も成功する”って信じたかったんじゃないかな。


凛のいつもと違う真剣な空気を感じ取ったらしい桜太くんは、表情を引き締めて「わかった」とだけ言って小さく頷いた。

それを見届けた凛は、くるりと身を翻して私に近寄り。


「素直になって、頑張るよ!」


そう言って、頼もしい笑顔を見せた。

凛はやるとなったら大胆にやってのける女の子。

そんな逞しい彼女が、私にはとても格好良く思えた。


同じく笑顔を返す私に、凛は何故か意味ありげな視線を向けてくる。


「瑛菜~、さっき好きな人に告白してないって言ってたよねぇ?」


ギクッ。嫌な予感。

次に凛が何を言おうとしているのか、なんとなくわかる……。


「瑛菜も頑張りな!」

「言うと思ったぁ~。私はもう『何とも思ってない』って言われたんだってば」

「でも、このまま気持ち伝えないんじゃスッキリしないでしょ!? 当たって砕けな!」

「えぇ~~」


フラれるのがわかってて告白するのは勇気いるよ……。

凛のことでは強気になれるくせに、自分のこととなると途端に臆病になる自分が情けなかった。


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