やっぱり、好きだ。
 
 「え??」

 「『ずっと想い続けてあげられなくてゴメン』くらいの気持ちでいて欲しいですね」

 不服そうに、俺の胸に軽く拳を叩きつける朝倉先生。

 あれ。俺、朝倉先生の事、誤解してたかもしれない。

 「俺、朝倉先生は瑠美の事嫌いなのかと思ってた」

 「私が桜井先生を『捨てられていい気味』とでも思う人間だと思ってたんですか??」

 俺の失言により、朝倉先生のご機嫌が更に角度をつけて斜めに傾いた。

 「そうは言ってない」

 すぐさま否定すると、

 「じゃあ、どう思ったんですか??」

 不機嫌なままの朝倉先生が、喰い気味で質問を被せてきた。

 「スゲエいい奴だなと思った」

 口調強めだし、勝気な朝倉先生は、顔が可愛い分、もっと傲慢で性格悪いのかと勝手に思っていたから。

 「ッッツ!!」

 俺にふいを突かれて褒められたもんだから、驚いて顔を真っ赤にする朝倉先生。

 うわ。かっわいー。照れてるし。

 「惚れました??」

 涙目になりながらも強気な姿勢の朝倉先生。

 「ない」

 大学時代なら、間違いなく手出してただろうな。こんな可愛い子が自分を好きだと言ってくれているのだから。だけど、無理だ。また同じ事をしてサヤ子がまた遠くに行ってしまうのは、どうしても嫌だ。それに、朝倉先生も滅茶苦茶イイ奴だから、軽い気持ちで変な事したくない。
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