やっぱり、好きだ。
「採用決まったんだ?? 本当に辞めちゃうの??」
日誌を書き込む私に声をかけてきたのは、同期の奈々。
「うん。この歳での転職はなかなかしんどかったよー」
そんな奈々に渋い笑顔を作って返す。
私、高村サヤ子 29歳 独身。
7年間看護師として働いてきた病院を辞め、春から高校の保健室教員になります。
「サヤ子がいなくなると本当に大変。サヤ子、仕事出来たから・・・」
私の手を握り、残念そうな顔をしてくれる奈々は今年主任になった。
同期は皆、結婚するか役職が付いていた。
私にはどちらも無かった。
上司に嫌われる事もなかったが、特別好かれることもなかった為、私に昇格の話は来なかった。
昇格するには、上司に好かれる努力も必要。でも私は努力は全て仕事に注いでいた。
「高村先輩みたいにはなりたくないよね」
仕事の休憩時間、コソコソと私を嘲う後輩の陰口を耳にした時、今までやりがいと生きがいを持って働いてきた自分がやけに恥ずかしく感じて、別な道を模索した。
まぁ、早い話、逃げたわけです。
そして私は、春から働く高校の近からず遠からずの場所に引っ越した。