やっぱり、好きだ。
「でしょうね」
だって『あと1分』から3分は経っている。ラーメンがのびていない事を祈りながら割り箸を割る。 箸をラーメンの入った容器に突っ込み、ラーメンの様子を確認していると、
「未だに塩ラーメン好きなんだ??」
青山くんもラーメンを覗き込み、麺の状態をチェックし出した。
『未だに』・・・。高校の頃、一緒に受験勉強をしていた時、小腹が減ると2人でカップ麺を食べたりした事があった。青山くんはその時の事を覚えているのだろうか。青山くんにとって、私との思い出なんて無き物にしたいだろうに・・・。でも、こんな小さな事を覚えていてくれた事が、やっぱり嬉しい。
「そうですね。塩が1番ですね。いただきま・・・」
少々長めに放置してしまったラーメンを、これ以上伸びないように早速箸で麺を挟むと、その手を青山くんが掴み、自分の口にラーメンを運んだ。
「うま。俺も塩が1番。サヤ子に会うまでは味噌が1番だと思ってたけど」
挙句、私の指から箸を抜き取り、半分くらい一気に食べてしまった青山くん。
お弁当、2個もあるのに何故他人の昼メシまで食べちゃうんだ、この人。しかも、中途半端だし。全部食べてくれるなら、新しくラーメン作りなおすけど、半分て。さすがにアラサーにもなると、ラーメン1・5杯は食べられない。だけど、半ラーメンじゃ満たされない。
「サヤ子、腹壊したらほんとに胃薬くれよな」
ラーメンを私の分も残すのは優しさだと思っているのか、はたまた女子は小食な生き物で、半分あれば充分とでも思っているのか、青山くんは若干迷惑な量のラーメンを残して保健室を出て行った。