やっぱり、好きだ。





 5時間目が始まっても保健室にやってくる生徒はなく、『今日は平和だなー。 みんな健康で何よりだ』と思いながらボーっと窓の外を眺めたりなんかしていると、扉の向こうからこちらに向かってくる足音が聞こえた。

『サボってないで仕事しなさい』って事ですかねーと心の中で呟き、体調を崩した生徒を招き入れようと自ら扉を開けると、

 「青山先生?? 大丈夫ですか?!」

 足音の主は青山くんだったらしく、俯きながらお腹を摩り、蹲りかけていた。

 「自習にした。胃薬もらいにきた」

  顔を青くさせ、壁にもたれかかる青山くん。

 「動けますか?? ベッドに行きましょう」

  青山くんの腕を持ち上げると、

 「連れてって」

  青山くんはその腕を私の肩にまわした。

 「私のラーメンにまで手出すからそーゆー事になるんです」

  青山くんを半ば引きずる様にベッドに運び、棚から薬を取り出していると、

 「弁当、全部食ったから」
 
 青山くんがベッドにごろんと横たわった。
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