やっぱり、好きだ。
優しさが集まれば
「はぁはぁ・・・」
その日の放課後、息を切らせた女の子が、突然保健室に駆け込んできた。
女の子はびしょ濡れで、着ていた体操服はところどころハサミを入れられている様だった。
「ど・・・どうしたの!??」
慌てて戸棚から適当にタオルを取り出し、彼女にそれを渡し、自分も彼女の身体を一緒に拭いた。
「・・・体操服、貸してください」
下を向く彼女は、声も身体も震えていた。
「うん。今用意するね。あ。貸し出し表に学年とクラスと名前書いてね」
『風邪をひいたら大変だ』と棚から彼女に合いそうなサイズの体操服を探している間に、その子は震える右手を左手で固定しながら、貸し出し表にペン先をのせた。
「何も・・・言いたくないかな??」
体操着を手渡しながら彼女の顔を覗き込むも、
「・・・・」
彼女は答えてくれず、貸し出し表に『1年1組 吉村沙織』と書いた。